赤岳登山コース情報
中央分水嶺を歩く~県界尾根コース~
八ヶ岳・赤岳の東側にある文字通り長野県と山梨県の県境にある県界尾根は、太平洋と日本海に注ぐ水を分かつ中央分水嶺でもあり、山麓の野辺山へ根を下ろす長大な尾根である。県界尾根は下部はなだらかな線を描いているが、上部は急激に傾斜を増し、急峻な岩峰を2899mの赤岳山頂へと突き上げている。
県界尾根コースは、八ヶ岳の東麓からの赤岳への登山コースのひとつで、標高2600mくらいまでなら初心者でも登れるが、残り300mの上部は、ほぼ山頂までクサリと梯子が断続的に続く難コースである。県界尾根に取り付くには、長野県側と山梨県側からのルートがあるが、ここでは登山口に駐車場が整備されている長野県側からのコースを紹介しよう。
登山口~小天狗
長野県側の登山口は、南牧村にある「志木市八ヶ岳自然の家」を目指し、その先の害獣防止ゲートを開閉して進んだ先に登山口の駐車スペースがある。
登山口から少し進んで行くと、森林火災の延焼を防ぐために切り開かれた防火帯の笹原をを登るようになる。笹が生い茂り道がやや不明瞭なところもあるが、コース上にはポールが立っているので目印となる。
笹原の 斜面を登り詰めたところが「防火線の頭」となる。
防火線の頭を過ぎると傾斜は一端緩むが、やがて急な痩せ尾根を登るようになる。この尾根は県界尾根から派生する尾根で、県界尾根にのるまでの行程でややキツイところだ。
途中左手の木々の間から、富士山の遠景がのぞめる。
左側が崩落した縁に沿って付いた道を通り、急な岩場を通り過ぎると傾斜は緩み、山梨県側からのコースと合流したところで県界尾根にのる。
合流点から少し先の広場が小天狗となる。よい休憩場所になる。
小天狗~大天狗
小天狗からはしばらくなだらかな道が続く。ところどころ開けた場所もあり、前方に目指す赤岳とその稜線が、また左手に並行して走る真教寺尾根越しには八ヶ岳の権現岳が見え、富士山の展望も素晴らしい。小天狗から大天狗までが、本コースで一番ホットできるエリアといえる。
なだらかな道は1時間ほど続き、傾斜が急になってひと登りし、大岩を左から巻くと大天狗にでる。
大天狗~赤岳山頂
大天狗を過ぎると少し下り、岩がゴロゴロした急斜面を登るようになる。標高差100mほどこの急坂を登ると、前方に岩壁が立ちはだかる。
この岩壁から先が、本コースの核心部ともいえる。標高差300mの鎖場と梯子が連続する岩場が山頂まで続く。
岩壁は、左から取付き、鎖の付いた足もとは鉄板一枚の道を斜上し、次に岩場の長い鎖を直上し、その上にある梯子を上がる。
さらにトラバースしていくと、ルンゼ状の窪んだ岩場のクサリを上がる。
鎖を上がった先を右に折れると、ハイマツ帯の先に赤岳展望荘が見える。その先に山頂を経由せず赤岳展展望荘に直接アプローチできるトラバース道の分岐があるが、この分岐の道標は横たわっており気付き難い。
さらに先に進むと、鎖場となりその先には長い梯子が続く。
振り返ると、これまで登ってきた長大な県界尾根を見下ろせる。右手には横岳に続く南八ヶ岳の稜線が目に飛び込んでくる。
長い梯子が終わると、草付きの緩やかな道になるが、ホットするのもつかの間、すぐにまた鎖場が現れる。
一枚岩の鎖場を斜上し、さらに岩場を直上し、左に斜上する鎖場を上がって行く。
この辺りまで来ると、前方に山頂の赤岳頂上小屋が見えてくる。
その後も長い鎖場は続き、グングンと高度を上げ、先ほどまで水平の位置に見えていた赤岳展望荘は、はるか下に見える。
山頂にある赤岳頂上小屋の下にあるトイレへの分岐まで鎖場は続き、やっと山頂に出る。
中央分水嶺の旅
八ヶ岳の縦走路は日本海と太平洋に注ぐ水を分ける中央分水嶺にある。奥秩父から引き継いだ分水嶺は、八ヶ岳の県界尾根を駆け上がり、蓼科山へと続いている。八ヶ岳の縦走路は、岩峰を連ねる南八ヶ岳からコケの森と湖が象徴するなだらかな北八ヶ岳と変化に富んでいる。一度では無理でも、何度かに分けて分水嶺を歩いてみるのも面白いかもしれない。
<コースデータ>
コース:県界尾根登山口(長野側)~(1時間50分)小天狗~(1時間40分)大天狗~(1時間50分)赤岳山頂~往路下山
標高差:赤岳山頂2899m、高低差約1249m
コースタイム:登り5時間、下り3時間10分、合計8時間10分
アクセス:
県境尾根登山口(長野側)まで、車で中央自動車道 須玉ICより約50分。公共交通機関はない。
アドバイス:
・途中には山小屋もなく長丁場になるので、早めの行動がのぞまれる。
・標高2600mより上は上級者コース。経験者との同行が望ましい。
・標高2700m付近のトラバース道の分岐は分かり難い。6月頃までルンゼに積雪があり当てにしない方がよい。
バリエーションコース:
・赤岳登頂後、横岳方面に稜線を縦走し、三叉峰から杣添尾根を下り、南八ヶ岳林道を経由して県界尾根登山口に戻ることもできる。体力があれば日帰りも可能。自信のない方は赤岳展望荘で1泊するのがよい。
コメントをお書きください