仙丈ヶ岳登山コースガイド
沢からカールに登りつめる藪沢コース
南アルプスの南部に位置する仙丈ヶ岳。日本百名山でもあり標高は3000mを超える高峰。3つのカール地形に囲まれた独特の山容が特徴。登山道は鎖場などはなく、3000m級の南アルプスの山としては、入門コースといわれている。
最もポピュラーなコースは、北沢峠から小仙丈ヶ岳に至る尾根を登り、稜線を辿り山頂に至るものだが、今回紹介するのは藪沢コースという沢に沿って藪沢カールに詰め上げ山頂を目指すもの。下山は稜線を辿り、小仙丈ケ岳を経由して北沢峠に戻る周回ルートを紹介する。
藪沢コースのおすすめポイントは、小仙丈ケ岳を経由するコースと比べ、
①登りのコースタイムは10分短い。
②沢沿いの道で尾根道より開放的で明るい。
③水場がある。
④馬の背ヒュッテや仙丈小屋を通る。
⑤滝や甲斐駒ヶ岳の眺めなど見所がある。
⑥夏は高山植物が多く見られる。
など、単調な尾根道に比べると変化に富んでいて、登山者も少なく静かな山登りができる。
北沢峠~馬の背ヒュッテ
藪沢コースは、北沢峠(バス停)から林道を長野県側(伊那側)に進み、左側に林道をショートカットする道を入る。
ジグザグの道を下るとすぐに林道にでる。左手に林道沿いに大平山荘があり、大平山荘の右横を通り抜けると、「藪沢重幸新道登山口」がある。
登山道に入り、しばらくは緩やかな道が山腹の斜面をトラバースするようにと通っている。小さな沢を横切る。
登山道は少しずつ傾斜を増してくる。
樹林帯が切れて、後方に鋸岳が見える場所を通る。
急斜面の登りがしばらく続く。
右手下方に藪沢が見えてくる。
登りの傾斜が緩み、沢沿いの登山道を辿るようになる。
徐々に沢床が近づき、やがて道は橋を渡り、左岸沿いを進む。
橋を渡ってしばらくは沢沿いの道がずっと続く。
ところどころ傾斜がキツイところもあるが、この辺りでは滝も見られ、ところどころにお花畑も見られる明るく楽しい道だ。
振り返ると甲斐駒ヶ岳の雄姿ものぞめる。
しばらく沢を詰めていくと、分岐があり、右手はこれから進む馬の背ヒュッテ、山頂方面、左後方の道は藪沢小屋を経由して大滝ノ頭(北沢峠から小仙丈ケ岳を経由して山頂に至る道の途中)に出る道。
この分岐を右方向に進む。
(分岐A)
沢を離れ、斜面を登っていく。両脇が鹿防護柵が設置された登山道を通り抜けていくと駒の背ヒュッテがある。
馬の背ヒュッテ~仙丈小屋~仙丈ヶ岳山頂
馬の背ヒュッテから先も、鹿の防護柵が設けられており、急な斜面をひと登りすると分岐があり、右の丹渓新道を分け直進する。
右手の植生保護柵の案内板を過ぎると、背の高いハイマツ帯の道をとおり、森林限界へとでていく。
やがて左手に小仙丈岳、前方に仙丈ヶ岳と藪沢カール、仙丈小屋が見えてくる。
道は稜線からカールの底へと入っていき、草原のような場所を登っていくようになると仙丈小屋も近い。
仙丈小屋は藪沢カールの底に建ち、ここで道が分岐している。
左は小仙丈ヶ岳からの道に至り、右が仙丈ヶ岳山頂方向になる。
(分岐B)
仙丈小屋の左から藪沢カールの縁に登り、稜線を辿り仙丈ヶ岳の山頂を目指す。
斜面をひと登りすると、稜線に出て、地蔵尾根への分岐を右に分け、ザレた稜線上をゆるやかに登っていく。
最後は急斜面を登り上げると3033mの山頂に到達する。
山頂からは富士山の横に第2の高峰北岳がのぞめ、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳や間ノ岳など南アルプスの山々が一望できる。
来た道の反対側からは、大仙丈ヶ岳へと続く仙塩尾根が延びている。下山は仙塩尾根の分岐を見送り、左手の小仙丈ヶ岳方面に下る。
山頂~小仙丈ケ岳~北沢峠
左下に藪沢カールを見ながら、カールの縁を半円を描くように稜線上を登山道が通っている。
右手には大仙丈沢カールが見える。
右手に小仙丈沢カールが見えるところまで来ると、分岐があり左手は藪沢カールの仙丈小屋に戻る道(分岐Bに至る)、直進が小仙丈ケ岳である。稜線上を少し下り、ゆるやかに登り返していくと小仙丈ケ岳に至る。
小仙丈ケ岳からは急な尾根道を下る。
樹林帯に入り尚も下っていくと、大滝ノ頭という分岐に出る。ここは仙丈ヶ岳の五合目とも呼ばれる場所。左は、藪沢小屋を経由して馬の背ヒュッテに至る道。(分岐Aに至る)
北沢峠は直進。少し平坦な道になるが、すぐに右方向に急斜面を下るようになる。
(分岐C)
急な尾根道は続き、傾斜が緩んだところが二合目と呼ばれる分岐点。右方向の道は長衛小屋に向かう道で、林道を経由して北沢峠に戻ることもできる。直進は北沢峠のバス停横に出る道。
直進すると、小さなピークを越えるため登りに転じ、ピークを越えた後は再び下り道となり、しばらく行くと北沢峠にでる。
(番外編)馬の背ヒュッテ~大滝ノ頭
下山時に小仙丈ケ岳を通らずに、仙丈小屋、馬の背ヒュッテと来た道を戻り、分岐Aから分岐Cを経由して北沢峠に下山する方法もある。 この道は比較的平坦な、斜面をトラバースする道で、藪沢に流れ込むいくつもの枝沢を横切るため給水には事欠かない。
但し、7月の遅くまで雪渓が残ることもあるので注意したい。
藪沢小屋は、素泊まりのみの小さな小屋だが、小屋の前には携帯用トイレと水場がある。
藪沢コースで見られる高山植物
<コースデータ>
コース:藪沢コース 北沢峠~(10分)太平山荘~(150分)馬の背ヒュッテ~(80分)仙丈ヶ岳頂
仙丈ヶ岳山頂~(50分)小仙丈ケ岳~(40分)大滝ノ頭~(80分)北沢峠 分岐A(馬の背ヒュッテ下分岐~(35分)分岐C(大滝ノ頭)
コースタイム:登り4時間10分 下山2時間50分
アクセス:北沢峠へのアクセスは、伊那側・仙流荘前から南アルプス林道バスで約60分。(2021年8月現在、広河原からの林道は通行不可、伊那側から途中徒歩区間(約10分)とシャトルバスが運行し北沢峠へのアクセスが可能となっている。)
山小屋:馬の背ヒュッテ(2021年は営業休止)、仙丈小屋、北沢峠にはこもれび荘、長衛小屋がある。
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