夏の阿弥陀岳南陵ルート
阿弥陀岳の南陵ルートといえば、冬期のバリエーションルートの入門編として人気の高いコースですが、夏期にはほとんど登山者はおらず、隠れた花の宝庫に生まれ変わります。今回は南陵ルートを登り、中央稜を下降し周回するコースとそこで見られた高山植物を紹介します。(写真は8月上旬のものです。)
コース紹介
南陵ルート 船山十字路~立場岳
阿弥陀岳の南陵ルートは、船山十字路が起点となります。
船山十字路は阿弥陀岳の西麓、原村の丸山地区別荘地の奥にあります。
道路わきに駐車スペースがあり、その先は車両通行止めになっています。
車止めを越えて林道を進みます。
すぐに左に阿弥陀岳への一般登山道である御小屋山への道が分岐しますが、林道をまっすぐ進みます。
林道を道なりに30分ほど歩くと、右側に入る薄い踏み跡があります。道標も「阿弥陀岳(南陵)」とあります。
水のない沢を横切り堰堤の脇から斜面に取り付きます。
急斜面をジグザグに登り尾根上に出たら左方向に進みます。
ここから約2時間の立場岳への急な登り道がはじまります。立場岳山頂までは道は明瞭です。
標高を上げて行くと、シラビソ林と苔生した林床が続いています。
苔に交じってリンネソウが咲いています。
その他、立場岳までの樹林帯では、ミヤマアキノキリンソウ、ウツボグサ、ハナチダケサシ、ソバナ、ハクサンオミナエシなどが咲いていました。
傾斜が緩んでくると立場岳の山頂はもうすぐです。山頂は樹林帯の中にあり左のような表示があるだけです。
(表示は2248mとなっていますが、実際は2370mの誤りと思われます。)
立場岳~P3ルンゼ
立場岳を過ぎるとしばらく緩やかな道が続きます。
しばらく進むと樹林帯を抜け、右側が砂礫の斜面になった「青ナギ」と呼ばれる場所に出ます。目指す阿弥陀岳も前方に見えます。
青ナギを通過すると再び樹林帯に入り、「無名峰」と呼ばれるピークまで標高差約200mほどを登ります。
無名峰を過ぎると再び傾斜が緩み、ザレた道を進み、P1、P2と呼ばれるピークを何れも左から巻くように進みます。
この辺りまで来ると、高山植物の写真を撮る手が止まらなくなってきます。
タカネナデシコをはじめ、イブキジャコウソウ、チシマギキョウ、コバノココメグサ、タカネグンナイフウロ、シナオノオトギリ、タイツリオウギ、ミネウスユキソウ、チョウジコメツツジ、ミヤマオトコヨモギ、ムカゴトラノオ、ミヤママンネングサ、タカネニガナ、タカネコウリンカ、ウメバチソウ、ホソバノキリンソウ、シコタンソウ、キバナシャクナゲ、ゴゼンタチバナなど色とりどりの花が咲き誇っています。
P3のピークは直登せず、左のルンゼから巻き登ります。
左の斜面を横切る一筋の踏み跡を辿り、P3ルンゼの基部につきます。
P3ルンゼ~山頂
P3を巻くルンゼが、このルートの核心部です。ルンゼへの取付きは急な岩場になっており、ルンゼ入口に設置されているワイヤーだけを頼りに取り付きます。
急斜面を慎重に登っていきます。
P3ルンゼは、花の核心部でもあります。ルンゼ取り付き周辺から、ルンゼ上やその上部では、キンロバイ、カイタカラコウ、クロクモソウ、ミヤマオダマキ、ムシトリスミレ、ミヤマアケボノソウ、タカネサギソウ、ダイモンジソウ、ミソガワソウ、タカネシオガマ、ニョホウチドリなど八ヶ岳でも珍しい高山植物が見られます。
ルンゼを登り切ると視界は開け、左に曲がるように尾根上を進み、P4も左から巻けば山頂も間近です。
山頂直下でもお花畑は続きます。ミヤマダイコンソウ、ミヤマミミナグサ、タカネツメクサ、ヨツバシオガマ、イワオウギ、ミヤマウイキョウ、タカネイブキボウフウなど高山らし花に高山蝶が飛来しています。既に花は終わったいたが、チョウノスケソウやイワウメも見られます。
立場岳から約3時間ほどで山頂に到達します。
険しい道程なだけに達成感もひとしおです。
山頂からは赤岳方面に下る道と御小屋尾根の登山道の2つに分かれ、視界のない時などは注意が必要です。
下山はまず御小屋尾根の登山道を下っていきます。
下山 山頂~中央稜ルート
御小屋尾根の登山道を下っていくと、まず岩場があり、梯子と鎖りで越えていきます。
鎖場を越え、道は左にカーブし、右下に続く登山道を見送り、そのまま踏み跡を直進すると、中央稜ルートへ下る道(標高2750m付近)があります。
急峻な踏み跡を下っていきます。
2550m付近の岩場は右から巻き、2500m付近の岩場は左から巻きます。(2500m付近は傾斜が緩くなり踏み跡が不明瞭になります。そのまま直進すると岩場に突き当たり行き止まり右の斜面を下りたくなるので要注意。手前の左にルンゼ状の道が付いています。)
岩場の下に出たら、基部をトラバースして進むと、その後は踏み跡は明瞭となり、尾根上を忠実に下っていきます。
標高2200m付近で傾斜は緩み、緩斜面がしばらく続き、最後に再び急斜面を下っていくと、1970m付近で広河原沢右俣の沢沿いの道に出ます。沢沿いの道を下り、二俣を通りさらに沢沿いを下り、一度左岸から河原を渡り、右岸の道を下っていくと行きに曲がった南陵の取付きの道標の場所に戻ります。
広河原沢の二俣付近はマルバタケブキの群落があり、その周辺にはコバノイチヤクソウ、キバナノヤマオダマキ、キオン、サワギク、ミヤマアキノキリンソウなどが見られます。
南陵フラワーギャラリー(8月上旬)
南陵フラワーギャラリー(7月上旬)
<コースデータ>
コース:(登り)南陵ルート 船山十字路登山口~南陵取付き~立場岳~無名峰~P3ルンゼ~阿弥陀岳山頂 (下山)中央稜ルート 山頂~中央稜下降口~広河原沢二俣~南陵取付き~船山十字路
標 高:船山十字路(1620m)、阿弥陀岳(2805m) 標高差1185m
コースタイム:(登り)5時間30分 (下り)3時間30分
※南陵ルート、中央稜ルートは何れも一般登山道ではありません。踏み跡の薄い箇所や急峻な岩場もあり、ルートに詳しい人と同行することをおすすめします。
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zuko (月曜日, 02 8月 2021 05:55)
昨日阿弥陀南陵ルート行ってきました!お花の種類沢山ありがとうございます☺️お花畑でした�険しかったので達成感ひとしおでした